2008年8月31日日曜日

書籍「何でも見てやろう / 小田実」(講談社文庫)

すばらしい一冊だと思う。できることなら学生時代にぜひとも読んでおきたかった。

僕が小田実氏について持っていた予備知識といえば、田原総一朗の「朝まで・・・」というTVの討論番組に出ていたことくらいという実にいい加減なもの。「実」を「まこと」と読むことも、昨年亡くなっていたことも全く知らなかった。

この本は、1950年代後半に著者が東大からフルブライト留学生として米ハーバード大学に留学、その帰途で世界を旅するという旅行記的内容。東大からフルブライトと書くと、超優等生で面白みのかけらも感じられないが、彼の文章は真っ直ぐで全く嫌味がない。ヨーロッパからアフリカ、中東、インドとめぐる旅は超がつくほどの貧乏っぷり。インド以東の記載がないのが残念だ。

もちろん現代に即していない部分もあるが、50年前の空気が感じられるのは面白い。また、1年間を過ごしたアメリカに対する考察が興味深い。「アメリカの匂い」というところでは、ある意味僕が3回のアメリカ行きを通じて感じたことと、とても及ばないけれど似た部分があり驚いてしまった。

2008年8月25日月曜日

書籍「ぼくは散歩と雑学が好きだった。小西康陽のコラム1993-2008 / 小西康陽」(朝日新聞社)

まさか、続編が出るとは・・・という驚愕の一冊。96年に出た「これは恋ではない」は僕の大好きな一冊だ。

取り敢えず一通り読み終えて思ったのは、やっぱり小西康陽もそれなりに歳をとったんだなあ、ということ。「これは・・・」のときに僕が感じた純粋さとか潔癖さみたいなものは、若干薄れてそれなりに俗っぽくなっている。例えば、人の悪口みたいなものを書くようになったりとか、エロティックなことも書くようになったりとか。

ただまあ、それはそれで、人間らしさが感じられて良い、という見方もできると思う。ネタばらし的な文章も多いのでじっくり楽しめそうだ。

相変わらずデザインなどトータルで凝りまくっているところも良い。今回はカラーも多くて、アルバムジャケットの紹介も絶好調な感じ。ブックカバーを外した時には、にやりとしてしまった。

何年かかけて拾い読みしていくうちに、また新たな感想を持つようになりそうな一冊。

2008年8月23日土曜日

映画「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2008」

観に行ったのは、ブラジルプログラムで、


  • アルファヴィル 2007
  • デカセギ
  • ピシンギーニャとサンバ・スクール
  • くちづけ
  • だめなやつ - 世界の始まり -
  • アダン・グザレパラダ-地より授かった子-
の7本。残念ながら、「アルファ・・・」から「ピシン・・・」まではちょっと寝てしまった。

印象的だったのは、「くちづけ」と「だめなやつ - 世界の始まり -」の2本。

「くちづけ」の方は、ある少女が初めてのキスをするまでのストーリー。練習をしたり、想像が膨らんでいく様子は微笑ましくもあり、アホらしくもあり、エロチックでもある。少女は癖のある可愛らしさで、映像的にも面白い。恋人同士で観たら、あとで盛り上がりそうだ。

「だめなやつ - 世界の始まり -」は、アニメーションによる天地創造というか、人類誕生の物語。登場する神も悪魔も人間も、どこかラテン的で(ん?ブラジル的とは違うのか??)適当なところが良い感じ。個人的には「ノアの箱舟」のパロディと、悪魔のコメントには笑ってしまった。良くできている。

あと、最後の一本、「アダン・グザレパラダ-地より授かった子-」も悪くない。リオデジャネイロのスラム街で500以上の曲を書き続けた男のドキュメンタリー。歌詞に日本のことまで出てくるのにはびっくり。

ところで、このフェスティバルが開催されているHEP HALL、椅子が酷いので、長身で腰痛もちの人は要注意(あんまりいないか、そんな奴)。

2008年8月22日金曜日

CD「African Scream Contest / V.A.」

ベニンとトーゴで(!!)70年代に活躍したアーティストばかりを収録したアフリカものコンピ。「African Scream Contest」っていうタイトルは良いセンスしてる。

ラジオで、3曲目に収録された"It's Vanity / Gabo Brown & Orchestra Poly-Rythmo"を聴いて、思わず買ってしまった。

なんでもこのAnalog Africaなるレーベル、あるドイツ人がやっているらしいのだが、その音楽に対する思い入れが笑ってしまうくらい素晴しい。ラジオでは、アフリカへレコードの買い付けに行くために、どうしたら足しげく通えるかを考えた挙句、航空会社に就職(確か、ルフトハンザだったと思う)。そして、自分が他の行き先に行きそうになったときには、アフリカ行きの同僚に行き先を代わってもらっていたらしい。1回のベニン行きで3,800枚のレコードを買って帰ったなんていう凄まじいエピソードもライナーに記されている。

レーベル・オーナー、Samy Ben Redjebによる全43ページのライナーがまた素晴しい。収録されているアーティストへのインタビューを中心に、いかにそのアーティストを知ったか、どのようにして会うに至ったかなどが、記されており、その思い入れの深さを窺い知ることができる内容になっている。まるでロードムービーか小説のようだ。

音楽だけでなく、ライナーも、写真も含めてトータルで凄く楽しめる一枚だと思う。マニアって凄い。

2008年8月21日木曜日

広告「公明党: ワカモノのミカタ」

家の近所に2枚のポスターが並べて貼られている。

コピーは、「贅金カット。」と「幸せな2人が、一番苦しかったりする。」。

それぞれライトブルーと、ちょっと曇ったイエローがほとんどを占めるこの2枚のポスターは、結構目を引く。コピーだけがマンガの吹き出しのように大きく配置されて黒字、あとの文字は、小さく白抜き。パッと見には全く公明党のものとは気づかない。

左下に配置された、関係あるのかないのか微妙な挿絵が面白い。単色でシルエットのみなのだが、「贅金・・・。」の方は、バレエのダンサーのようなシルエット、「幸せな・・・。」の方は、民族衣装をまとった踊り子のようなシルエットが描かれている。

コピーも良く考えられている。どちらも、キャッチーで、しかもちょっと考えさせる要素を持っている。よく考えれば、野党ならともかく、連立与党なんだから・・・・・という気がしなくも無いけど。

僕は全く、支持者でも信者でもないけれど、この2枚のポスターは嫌いじゃない。

2008年8月14日木曜日

書籍「蜘蛛の糸・杜子春 / 芥川龍之介」(新潮文庫)

今さらかもしれないけど、改めて読んでみるとなかなか新鮮。

表題の2篇を含めて全10篇の短編集。どうやら解説によると、芥川作品の中でも年少文学と呼ばれるものばかりらしい。

「蜘蛛の糸」と「杜子春」も勿論悪くなかったけれど、個人的に唸ったのは、「蜜柑」と「トロッコ」。いずれも超短い作品。でも、いずれもまるで一本の映画のような深みを持っている。「蜜柑」は、昔の日本が持っていた叙情性というか、原風景のような光景が目に浮かぶよう。クライマックスがドラマチックだ。「トロッコ」は、敢えて一言で言うなら日本版「ひとりスタンド・バイ・ミー」(!?)。僕はこちらのほうが好きかもしれない。

やはり古典と言われるものは、読んでおかなくてはいけないと感じる。

2008年8月12日火曜日

映画「闇の子供たち」

幼児売買春と臓器売買というテーマがテーマだけに、観ている間はどこまでが事実に基づいているのだろう?と考えながら観てしまった。

ただ、最後の最後で、「あ、この映画はエンターテイメントだったのね」と気づく。そんな映画。

そういう映画も嫌いじゃない。フィクションとノンフィクションの境界を明確にしなきゃいけないこともないわけで。ただ、メインのテーマを日本人としての倫理的な部分においていることはわかるにしても、タイの社会問題をダシにしているだけ、という印象も否めない。監督自身も、そことのところは、若干自覚しているようではある。原作にも同じことが言えるんだけど。

面白い映画ではあるけど、全部を鵜呑みにしてはいけない。

2008年8月11日月曜日

タモリの弔辞

「白紙だったのでは?」という騒動で話題になった赤塚不二夫葬儀でのタモリの弔辞。ちょっと遅くなったけど、その全文を読んで思ったことなど。

何はともあれ内容が素晴しい。僕は故赤塚不二夫氏にも、タモリにも特に思い入れはない。だが、この弔辞は出色の出来だ。全文を読んで、ゾクッとしてしまった。

こんなことをするのは野暮だが、構成をみてみよう:

訃報に接して

自分達世代にとっての故人の存在

出会い①

出会い②(①に重ねて)

教えてもらったこと

性格①

性格②(①と反対)

存在

思い出①

人生観「これでいいのだ」

思い出②

今、弔辞をどう見ているか?

締め(お礼)

結び

という構成なのだが、特に最後の部分、生前にお礼というものを言ったことがなかったというタモリが、故赤塚氏にお礼を述べるくだりと、結びの、私もあなたの作品の一つ、というフレーズがぐっとくる。

白紙であってもなくてもどうでも良いくらい、素晴しい内容だと思う。

2008年8月10日日曜日

夏の衝撃波08

「ソニック」って何と訳すんだろう?

会場に着いたのは、午後5時前というやる気のなさ。ついて早々に同行者がビールを求めたので、オアシススペースへ。勿論僕はお茶。同行者はコロナが薄いと文句を言っている。飲みながら、取り敢えずBoom Boom Satellitesを観に丘の上に向かう。

ヨーロッパで人気を得たらしい、とか、テクノっぽいロックらしい、といった前評判のみで行ってみたが、なかなか悪くない。音が厚いように感じたが、今日びそんなものはどうにでもなりそうだという気もする。いまどきといえばいまどきの雰囲気。数曲を見終わったところで、一人丘の上を離れ、再びオアシスへ向かい、タバコを吸う。

スポンサーはマルボロ。一人でタバコを吸っているのに、キャンペーンの声をかけられないのはなぜだろう。散歩がてら公園舞台を通りかかると、SKINDREDが目に入るが、残念ながら好みじゃない。

そしてそのままメインの海舞台へ。Alicia Keysを待つこと約10分。ステージが始まる。格好が微妙にダサいが、歌は素晴しい。2曲目が印象的だった。中盤はちょっとダレたような気がしなくもないが、それはこちらの予習不足かも。もっとソウル寄りになってくれればと思う。アンコールでNo Oneは演ったが、Like You'll Never See Me Againは結局演らず、割とあっさり終わる。

海舞台を離れ、再びタバコを吸いにいくと、CAFÉ TACVBAのステージに尋常じゃない数の人が上がっているのが目に入る。しかも聴いたことのある曲だ。近づいてみると、恐ろしいほど客が集まっていない。同行者を探したが見つからないまま、ステージに見入る。出来は悪くない、というか、良い。微妙にスカした感じが格好良い。ヴォーカルのオリジナリティとユニークなダンス、そしてキーボードのサウンドが、他にはない色をつけている。フロントマン4人がドラムのリズムに合わせて楽器を持たずにダンスだけするってのもなかなか斬新だ。客の入りは最低だったが、この日の一番はCAFÉ TACVBAだろう。

CAFÉ TACVBAを途中で後にして、再び丘の上へ。Fatboyのステージは既に始まっていた。ステージの上には、DJテーブルとFatboyのみ。こういうDJステージを見るのは初めてだ。巨大なスクリーンの映像とシンクロしたサウンドは、現代音楽というのはこういうものかと思わせる。もろにおっさんの意見だな。一人でステージに立ち、数千人を踊らせるというのはどんな気分なんだろう。ツナギなどは勉強させてもらいました、という感じ。

COLDPLAY後でもシャトルバスは5-10分待ちで乗ることができた。ボランティアの皆さんに感謝。

2008年8月2日土曜日

CD「All The Greatest Hits / Zapp & Roger」

一言で言うなら「変」。とても全曲最高とはいえないけど、こういう感じのファンクは結構嫌いじゃない。

特に#3 I Heard It Through the Grapevineは最高。他には、繰り返しが癖になる#5 Do It Rogerとか、ポップな#7 Doo Wa Ditty (Blow That Thing)あたりがかけやすいかも。

パーティーの合間にかけたい感じ。そんなパーティーやったことないけど。