2008年7月13日日曜日

書籍「延長戦に入りました / 奥田英朗」(幻冬舎文庫)

この著者はちょっと気になっていた。

きっかけは、2年ほど前のNumber誌665号で、日本シリーズで敗戦を喫した中日に関する「揺れる札幌ドームで」と題した2ページほどの原稿を読んだこと。中日者(=中日ファン)からの負け惜しみとして、めちゃくちゃに面白い文章だった。論理的で冷静な屁理屈とでも言えば良いだろうか。試合経過を詳細に追いながらも、決して対戦相手である日ハムの選手名を出さないところが秀逸だ。

で、「延長戦に入りました」は、野球のみならず、スポーツ全般を扱ったエッセイ集なのだが、評価としては微妙なところ。全て10年以上前に書かれたものなので、単純に若かった、というのもあるかもしれないけど、全般に構成が甘いというか読み応えがない。前述のNumber誌で見られたような、冷静さというのがなく、自分で面白いことを書いてやろう、言ってやろうみたいな意図が感じられるところも残念。

ただ、あとがきで著者自身も述べているように、これが奥田英朗だと思ってしまうのは間違いだろう。直木賞作家らしいし、本業の方の作品も読んでみたいところ。