2008年5月3日土曜日

映画「パレスチナ1948・NAKBA」

衝撃的な映画である。

この映画は、フォトジャーナリストであり、自ら報道写真月刊誌の編集長も務める広河隆一が、40年間に渡って記録しつづけてきた内容から生まれた長編ドキュメンタリー。

説明的なナレーションなどはなく、簡潔なテロップと、広河による問いかけやインタビューのみが延々と続いていく。テーマや登場する人物に沿った形で進んでいくため、若干時系列としては前後する箇所があったりして難しいところもある。

所々に挿入される広河の撮影した写真は素晴らしい。写真が時に文章や説明より雄弁であることを物語っていると思う。

ところで、この映画は微妙なスタンスの上に立っている。というのも、広河自身がパレスチナ問題に踏み込むきっかけとなったのが、イスラエルの共同農場での生活だったからだ。そこで目にしたことに疑問を感じ、パレスチナ難民に興味を持っていくことになるのだが、色々な証言を聞き、自身でも体験するにつれ、イスラエルのやり方に疑問を感じていく広河。だが、当時の共同農場で働いていた人々に接したりする時にも、直接的に非難をしたり、疑問を投げかけたりはしない。

この映画の製作にあたっては、その事実関係の確認に相当な労力を割いたという。この映画で明らかにされていることは、僕自身はこれまでに全く知らなかったことが多い。これは、マスメディアによる報道がいかに信じられないか、操作されているかということだと思う。確かに、この映画にしても、全国公開という形で上映される以上、何らかのバイアスというか、力が加わっているという見方をすることもできる。

だが、今回僕は幸いにも、広河氏の話を直接聞く機会に恵まれた。その時に感じた印象では、彼のことを信じたいと思う。

大ヒットすることは絶対にない作品ではある。だが、多くの人に観てもらいたいと思う。

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