2009年2月4日水曜日

書籍「ちくま日本文学全集: 色川武大」

文学全集なんて、普段はまず手を伸ばすことはないけど、これはすばらしい。はっきり言ってここ数年で最も衝撃的に良かったと言えると思う。

全集なるものでは当たり前のことなのかもしれないけど、ある作品の一部のみが収められているというベストアルバム的な構成にまず驚いてしまう。

この色川武大なる人物、阿佐田哲也と同一人物とか、「狂人日記」が有名とかいうことだけは知っていたけど、まともに読むのは初めて。

さまざまな文体、さまざまなテーマの作品が収められているが、どれもが素晴しい。特に僕が好きなのは、戦後の東京を描き出した自伝的な文章の一群。混沌とした闇の世界が、色鮮やかに眼前に現れるとでも言えば良いだろうか。また、ナルコレプシーなる病魔を抱えた自己の内面を晒す文章も凄まじいばかり。

小説では「離婚」が心に沁みるが、これはあまりに個人的な事情によるものだから、正当に評価できていないかもしれない。

テーマも、闇に生きる人々や、芸人、ミュージシャン、棋士、女、食べ物など興味深いものばかり。平成まで生き、作品を発表していたことにも驚く。アウトロー的な人物や、ちょっとグロい物事を描き出すことで冴える筆致はある意味、村上龍を想起させる。とにかく面白い。

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