2008年6月6日金曜日

書籍「反転 闇社会の守護神と呼ばれて / 田中森一」(幻冬舎)

検察庁で特捜部検事を務めた後、闇社会の弁護士となった著者の自叙伝。

全体として、それなりに正直には書かれていると思う。新聞報道などに比べれば信憑性もそれなりにあるのではないかという気がする。

特に本書の前半部、生い立ちから検事時代について書かれた部分では、そのまっすぐで強い生き方に感服してしまう。また、司法や検察の仕組み、裏側などがよくわかり興味深い。

ただ、本書の中心となるのは、バブル全盛期を過ごした弁護士時代の記述だろう(ページ数的にも)。

著者はバブル時代の社会的なあり方、自分の行ったことを間違っていた、とは言いつつも、全体としては肯定しているように思える。これは、僕が思うに、バブルでそれなりに成功を収めた人に共通するものの見方だ。エスタブリッシュメントに対するアウトローを助ける存在でありたいとは言いつつ、アウトローとして話に登場するのはやくざ(もしくは、やくざまがいの企業家や、総会屋、仕手筋)か政治家のみだ。市井の人を描いても面白くないから掲載していないだけなのかもしれないが、結局のところ、アウトローと言っても金か権力を持っている人のみを指しているように思える。

僕はこうした著者のような考え方をした人や、これをありがたがって読む人の存在が、所謂、闇社会の存在ややり方を肯定することにつながり、日本という国のシステムが病む原因の一つになっていると思うのだが、いかがなものだろう。

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